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とくん、とくん

まさかそんなはずない

そんなはずないよ

だっていけないこと




20余年を親元で暮らしてきて、いい加減一人暮らししてみたいと思って探した物件。
駅からはちょっと歩くけど、大きい道路が近くにあるから騒音もあるけど、でもピンときた。
間取りは1DK。一人暮らしだし、備え付けの収納がたっぷり入るから十分。
ベランダに洗濯物も干せるし、エレベーターがついてるし、うん、いいかも。

仕事に行こうと家を出てエレベーター待ちをしていると、この日も“お隣さん”と一緒になった。
「おはようございます」
「おはようございます」
「暑いですね」
「暑いです。私死にそうです」
「暑いの苦手ですか」
「苦手どころじゃないです。溶けてしまいそうです」
「溶けたらボクが固めてあげますよ」
「あら、じゃあ元以上に綺麗に固め直してもらいましょ」
なんて冗談も言えるようになった。
“お隣りさん”こと、りゅうくんは私の2つ年下で、彼女はいないと言っていたけど嘘だと思う。
背は高いし顔立ちもよくて、若い割にしっかりしてるし浮いた感じがしない。
こんな男性を世の女子がほっておくわけがないと思う。

私には彼がいる。10コ年上の彼氏さん。特別ラブラブでもないけれど、特別険悪でもない。
よくいうマンネリってやつかな。今さらトキメキを感じることもないし、ドキドキもしない。
月に何度かはでかけるけど、どこに行っても何をしても新鮮味はもうない。
愛情はあると思うんだ。愛されてもいると思うんだ。でも・・・・。

「えっ…どうして?」
「安田の商談会に急遽呼ばれたんだ。本当にごめん」
「そんなぁ!」
「すまない。金子に頼み込まれて断れなかったんだ」
しょうがないのはわかってる。私と彼は同じ職場で、安田は取引先、金子は彼の同僚。そして安田の商談会がウチの会社にとって重要なのもわかってる。
「うん…」
そう言うのが精一杯だった。でもその日は久しぶりに楽しみにしてたイベントなのに…。

「はぁ…」
楽しみにしていた自分がバカみたい。なんか泣きそう。…泣けてきた。
化粧崩れたっていいや。もう家だし。そもそも崩れたってわからないでしょ。誰に会うでもないし。
「…」
「…!」
「どうしたんですか?」
「ん…ちょっとね…」
エレベーターの扉が開いた先にはりゅうくんが居た。マズイな、こんなとこ見られちゃった。
それにきっと戸惑うだろうな、いきなり泣いてたら。
「だいじょうぶですよ」
「や…でも…大丈夫そうに見えないですよ。どうしたんですか」
「だいじょぶだいじょぶ。ほら、どこか行くんじゃないの?どうぞどうぞ」
タオルで涙を拭って少しでも明るく振る舞う。りゅうくんに心配かけさせちゃいけないな。
「だめです」
そう言った瞬間りゅうくんの手は私の手首を掴んで、りゅうくんの部屋の前まで連れてこられた。
「ボクでよければ話してください。放っておけません」
「いや、でも大丈夫だよ。本当に。それにほら、端から見たらりゅうくんが泣かせてるみたいになっちゃうし…」
「ボクは構いません」
りゅうくんは真剣だった。もう泣ける気分はどこかにいってしまって、つまらないことで泣いていた理由を話すのが恥ずかしくなってしまった。
でもりゅうくんは手を解いてくれたものの、話すまで引き下がってくれないみたいだったから、仕方なく話す。

楽しみにしてたのは花火大会。
親戚のおばさんに浴衣の着付けもしてもらう予定で、久しぶりに気合い入れるつもりだったデート。
もちろん当日にびっくりさせたかったから彼には何も言っていなかったんだけど、こんなときに仕事に邪魔されるとは・・・。
仕事と私、どっちが大事なの!なんて言う気はさらさらないんだけど、残念、だったなぁ。

「驚かせてごめんね。だからたいしたことじゃないんだ」
「・・・・・」
ほら、ね。呆れさせちゃった。きっとくだらなすぎて言葉も出ないんだ。
「でも聞いてくれてありがとう。スッキリし」
「一緒にいきませんか?」

「え?」

「ボクでよければ一緒に行きましょう」

とくん、とくん、


まさかそんなはずない

そんなはずないよ

だっていけないこと


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この記事に対するコメント


先の作品が一つの作品として非常に完成度が高かったもので、次の展開が繰り広げられていたこと、嬉しい驚きです。
美しい人なんだろうなと思いながらもフィルター越しに見るようなほんのりしたイメージだったゆうさんが、俄然いきいきと身近に感じてきました。
これからどうなるの?!目が離せなくなったじゃない~!

【2010/07/31 09:55】URL | ぷりり #-[ 編集]


***ぷりりさん

>先の作品が一つの作品として非常に完成度が高かった
こちらこそうれしい驚きです! ありがとうございます!

こうして感想をいただけると励みになります。
続きも楽しみにしていてください!

【2010/08/04 10:17】URL | 綴夜 #XMatgrFs[ 編集]

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